2006年03月30日

DEALING IN MURDER

 by Elaine Flinn  from Avon Books

Dealing In Murder モリーはニューヨークで夫とともに骨董商を営んでいたが、夫が愛人と結託して贋物を売りさばいていたことが当局にばれ、モリーは逮捕され、夫と愛人は国外へ逃亡した。モリーは、関与していた証拠がなかったために釈放されたが、夫の裏切りに打ちのめされていた。そんなモリーに昔からの知人が手を差し伸べ、遠く離れたカリフォルニアの観光地カーメルでアンティークショップの経営をまかせた。

 ある日、モリーが前日買った机のことで訪れた家の前で、売り主が倒れ掛かり、モリーの腕の中で死んだ。背中を刺されていたのだ。着任したばかりの署長ランドールはモリーに疑いを持ち、彼女の過去を調べる。だが、無実のモリーにとっては、ランドールの尾行よりも、商品を搬入しにくる横柄なパブロや母の知り合いだといって近づいてきたおせっかいなビッツィのほうに頭を悩まされていた。

 モリーのキャラクターがいまいちよくわからなくて、なかなかのれないでいた。単に好みの問題なのかもしれないが。設定としては、元警官で中古家具の店を営んでいた父親や、美しい観光地カーメルという舞台など、ひきつけられるものがある。現在シリーズ第3作まで出ている。
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2006年03月22日

夏の庭 ― The Friends

 湯本 香樹実 著  ベネッセコーポレーション

夏の庭 ― The Friends 「ぼく」ことのっぽの木山、眼鏡の河辺、太っちょの山下は、中学受験を控えた仲良し3人組。山下が学校を休んだのはおばあさんの葬式のためだったと知り、河辺は興味しんしんで根掘り葉掘り聞き出した。河辺も木山も死んだ人を見たことがなかったのだ。近所のある一人暮らしのおじいさんがもう長くはない、と大人が話していたのを耳にした河辺は、死んだ人を見たいからおじいさんを見張りに行こうと言い出した。

 冒頭部分からは、仲良し4人組の少年たちが死体を捜しに行く、あの『スタンド・バイ・ミー』を連想した。といっても、実はあまりストーリーを知らないのだが(^^;)。こちらのほうは、最初はとっぴでわけのわからない思い付きで始まった3人の行動だったが、結果的にはおじいさんに生きる気概を与えることとなり、次第に心を通わせていくというハートウォーミングなお話。少年たちと老人の心の交流がユーモラスに描かれていく。3人はおじいさんと出会ったことで、ひと夏が終わるころにはひとまわりも、ふたまわりも成長していた。前の『カラフル』と同じく、大人が読んでも感じるところが多々ある物語だ。
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2006年03月18日

カラフル

 森 絵都著  理論社

カラフル 「おめでとうございます、抽選にあたりました!」死んだはずのぼくの魂の前に突然現れた天使が言った。なんでも、本来ならここで輪廻のサイクルからはずされるところなのだが、抽選に当たったので再挑戦ができるというのだ。そうしてぼくは、自殺を図ったある少年の体に宿って生き返り、なくしている前世の記憶を取り戻すというゴールに向かって修行を積むことになった。

 ぼくが体を借りた少年、つまり天使の業界用語でいう「ホームステイ」先は、両親と兄のいる家庭だった。最初は、自殺から生き返ったぼくを気遣ってくれる優しい家族だと思っていたが、実際は、母親はダンス教室の先生と浮気をしているし、父親は悪徳商法で幹部がごっそり逮捕されたお陰で部長になったと喜ぶ自分勝手な人間で、兄は顔を合わすたびに憎まれ口をたたく冷たいやつだった。しかも、初恋の下級生の女の子は援助交際をしているのだった……。

 児童書は大人になってからはほとんど読んだことがなかったが、児童書翻訳講座の先生のお薦め本だったので読んでみた。そうしたら、不倫やら援助交際やら自殺やらが出てきて、これが本当に子供の本なの!?と、ぶっ飛んでしまった爆弾 どうやら、最近の児童書事情は昔とはずいぶん様変わりしているようだ……。

 しかしながら、この本でもやはり、最初は投げやりだった少年が、周囲の人間の思いを知ることによって成長していく様子が描かれている。人を思いやる気持ちに目覚め、家族や友達と心を通い合わせるようになる。テーマはとても重苦しいけれど、冒頭から登場する天使と少年の掛け合いはコミカルだし、文章のタッチも軽い。その中で、少年の心の動きが丁寧に描写されていて、つい引き込まれてしまった。今まで知らなかった新しい世界をのぞいた気がした。
 
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2006年03月15日

幽霊探偵からのメッセージ

 アリス・キンバリー著 新井ひろみ訳

幽霊探偵からのメッセージ ペネロピーは夫に自殺されたのち、一人で息子を育てていたが、伯母のミステリ書店の経営を立て直すべく、伯母のもとへと引っ越した。最初の企画は、ベストセラー作家を招いて講演会を催すというものだった。ところが、その講演中に当の作家が突然倒れて死んでしまう。自然死に思われたが他殺と判明。せっかくのイベントが台無しになった、と思いきや、驚いたことに翌日からその作家の本が大売れに売れた。お陰でペネロピーは容疑者リストの上位者という微妙な立場に立たされる。

 ペネロピーにはもうひとつ奇妙な悩みがあった。ジャックという名の幽霊の声が聞こえるのだ。私立探偵だったジャックは50年前にある事件に巻き込まれ、現在書店のあるこの場所で殺害されて幽霊となり、それ以来その建物に縛りつけられていた。ペネロピーは妄想だと思い込もうとするが、結局はジャックの存在を認めざるを得なかった。探偵ジャックに促され、容疑を晴らすべく、いやいやながら真犯人に迫っていく。

 幽霊となった探偵と、推理はイマイチのミステリ書店主の迷コンビシリーズの第1作。たおやかなペネロピーとハードボイルドで男っぽいジャックの掛け合いがおもしろい。シリーズということなので、ジャックが命を落とすことになった事件の真相がいつ登場するかが楽しみ。

 あとがきによれば、作者アリス・キンバリーは夫婦合作のペンネームだそうだ。また、クレオ・コイルというペンネームも持っているとあり、"On What Grounds" の著者と同一人物だと判明。そうだったのか〜exclamation
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2006年03月05日

青と赤の死

 レベッカ・パウエル著 松本依子訳

青と赤の死 内戦終結直後のスペインは、フランコ将軍率いる国民軍に統治されていた。戦争は終わったとはいえ、戦いの爪痕はまだ街に生々しく残っており、それは人々の心の中も同じだった。フランコ派は共和国派を「赤」と軽蔑し、共和国側はフランコ側を独裁者と憎む。

 あるとき、マドリッドの裏通りで、泣く子も黙る治安警備隊員の射殺体が発見された。知らせを受けた警備隊軍曹のテハダが部下とともに現場に駆けつけると、死体のそばでかがみこんでいる女を発見した。しかも女は共和国側の民兵の制服らしきものを着ていた。尋問もそこそこに、女を犯人と断定して銃殺にしたテハダは、被害者の隊員が親友だとわかり愕然とする。

 一方、銃殺刑にあった女は、姪が落としたノートを拾いに行っていただけだった。恋人の理不尽な死を知ったゴンサロは、警備隊に追われる身でありながら、真相を究明し、手を下した人間を探し出すことを心に誓った。

 ゴンサロが事件を調べていくうちに、テハダのほうにもゴンサロの存在がわかりはじめ、テハダもまた、改めて親友の死について調査をすることになる。すると、そこには意外な真実が……。


 スペイン内戦を舞台にした物語の中でも、本書は嫌われ者の三角帽を主人公にした珍しい作品。親子・兄弟・親友同士が戦わざるを得なくなったスペイン内戦の独特の状況や、その終結後の治安警備隊による恐怖統治などの時代背景がよく描かれている。ともすれば、暗くて血なまぐさくなりそうなところだが、治安警備隊員の若者たちが等身大でコミカルに描かれていて、ピカレスク小説を思わせる。それにしては、主人公テハダが清廉潔白でさわやかすぎるが(^^;)

 本作は2004年度のアメリカ探偵作家倶楽部賞の最優秀新人賞を受賞している。それに、シリーズ作品ということなので、テハダが今度はどんな謎に挑むのか楽しみだ。
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