by Carole Nelson Douglas
from Forge

俺はラスベガスの探偵、ミッドナイト・ルイ。俺の鼻はいつも死体を嗅ぎつけてしまう。今回は、米国小売書店協会の本の見本市が行われている巨大なコンベンションセンターの中で見つけた。だからといって、警察に連絡するわけでもなく、俺は一人のうら若き女性を死体の場所まで誘導したのだ。なぜか? それは俺が人間ではないからだ。実は黒猫なのさ。
テンプル・バーはフリーで働くPRウーマン。今回は本の見本市のPR担当という大きな仕事を任され、はりきっていた。ところが、ある
出版社のペアのマスコット猫がいなくなった。慌ててセンターの中を捜していると、黒い猫が飛び出してきた。迷い込んだ野良猫を追いかけた先で死体を見つけようとは、だれが想像するだろう?
被害者はある出版社のオーナーで評判のよくない男だった。見本市を成功させるため、テンプルは殺人事件の捜査に、行方不明の猫の捜索にと奔走する。そして、彼女を気に入り、同居することを受け入れたルイは、彼女のためにマスコット猫たちの行方を追う。
猫好き読者に大人気のミッドナイト・ルイ・シリーズの第1作。ルイは探偵といっても、威勢のいい若猫ではなく、自称、経験をつんだ(中年の?)探偵だそうだ。ラスベガスの街を、裏通りの隅々まで知り尽くしているという(そりゃ、猫だものね)。普段はある
ホテルのオーナー夫婦にかわいがられ、ホテルのマスコット猫として給料(食事)をもらっているらしい。が、今回、テンプル嬢と出会ったことで、ルイの中の騎士道精神がうずいたようだ。彼女を守ってあげなければ……と(そんな猫欲しい

)。ということで、二人(一人と一匹?)はいっしょに住むことになり、今後のシリーズでは共に事件を解決してゆくことになるのだろう。
さて、この作品で特異なのは、猫が一人称で語っているところだ。主人公の探偵が一人称で語るのは珍しくないが、でもそれが猫となると……。読み始めたとたん、ハードボイルド探偵猫という設定にクラッときた私だった。だが、やはり全編猫の視点というのは無理があるのだろう。テンプル視点の三人称の語りの部分が挟まれてくる。いや、実際は量的にはこちらのほうが多いのだが。それにしても、主人公猫の一人称語りは斬新かつ魅力的だ。
それで、ストーリーのほうはどうかというと、殺人事件が起こった割には、それほど恐ろしいという雰囲気はない。犯人は最後のほうまでわからなかったが、ヒントもなかなか出てこないので、ちょっとアンフェアーのような気もした。それよりもこの作品では、書籍の出版業界の裏話みたいなところが楽しめるかもしれない。